最優秀賞
母の姿
私がなりたい大人は母だ。姑と同居し、肩身の狭い思いをしながらも、私と妹、弟の3人を立派に育てた。働いてはいないが、小中高のPTA役員や広報委員長として活動をしている。母は自分に自信がないようで、私によく相談し、娘の私の方がしっかりしていると言う。しかし、私は母の強さを身近で見て知っている。「自信持って」と励ましつつ、そんな謙虚なところも魅力なのだと思う。
私にはこれといった夢がない。先生になりたい、CAになりたい、と自分の夢を話すクラスメートを見るたびに、不安になる。しかし母を見ていると、今のままでも良いのかもしれないと思えてくる。母は夢を持っていなかったが、その時々で努力し、今は身近な生活の場で周りの人の役に立っている。その姿こそ、私が目指したい姿であり、私の思い描く幸せの形でもある。これから、たくさんのことを母に教わって、理想の自分を目指したい。
(審査員より)
まるでスーパーヒーローのような憧れの人を紹介して、そんな大人になりたい、という作文が多かった中で、この作品はひと味違いました。主役が「自分に自信がない」という「母」なんです。その「母」という存在を通して、無理して夢を持つよりも大切なことに気が付いていく。その思考の過程がきちんと描かれた文章でした。なかなか立派な夢を持てない人も多いはず。そんな人にそっと寄り添ってくれるような作文だと思います。