快速列車から降りた高校生
蝉の鳴き声がかすかに聴こえるのを遠く感じ、いつもの道を歩く私。教科書の入った鞄がずっしりと肩に沈むのが気持ちに比例していく。高校2年の夏休み明けの朝。皆、余韻が抜けないような顔で各々に暇をつぶす通学電車。
全日制の高校を辞めて通信制に転学した私は、新しい環境に馴染めない自分と高校卒業後の不安とで切羽が詰まっている。街ゆく学生たちは、様々な制服に包まれ、子供の顔をして笑っている。しかし、大人になるための道を選択しなければ人生は前へと進まない。いくら今の時を楽しく過ごしても客観視すれば空回りだ。失敗を繰り返して成功にたどり着く事もあるだろう。しかし人生は二度できないし、取り返しのつかないこともある。それが大人の責任だからだ。
だから私は同じ過ちをしないように、何が将来につながるか慎重に考えられる人になりたい。未来を考えて苦しい時こそ我慢できる大人になりたい。電車の窓に映る自分を見つめながらそう強く思った。